小児(海外第Ⅳ相試験/複雑性皮膚・軟部組織感染症)
小児(海外第Ⅳ相試験/複雑性皮膚・軟部組織感染症)
グラム陽性菌による複雑性皮膚・軟部組織感染症を有する1~17歳の外国人小児患者(海外データ)
海外第Ⅳ相試験の対象には一部国内承認外の適応菌種が含まれるデータで評価され承認されたため、国内で承認されている効能又は効果と異なるデータも紹介しています。
承認時評価資料:小児を対象とした海外第Ⅳ相試験(017試験/DAP-PEDS-07-03試験)
Bradley J,et al.,Pediatrics 2017;139(3):e20162477.
[利益相反:Bradley、Arnold、Arrieta、Congeni、Daum、Kojaoghlanianは、キュビスト社(現MSD)から研究資金を受領。Bradleyが所属するカリフォルニア大学サンディエゴ校は、キュビスト社(現MSD)から資金を受領し、Bradleyが臨床試験の設計についてに助言した。
Glasser、Patino、Yoon、Anastasiou、Bokeschは、本研究実施時キュビスト社(現MSD)の社員であった。Arnoldは、キュビスト社(現MSD)の臨床試験設計コンサルタントであり、CongeniはMSDのスピーカー ビューローに所属。
Wolfは、MSDの子会社従業員であり、同社の株式を所有し、またはストックオプションを保有している可能性がある。
試験概要
試験: | 多施設共同、無作為化、評価者盲検※1、実薬対照比較試験 |
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目的: | 主要目的:グラム陽性菌による複雑性皮膚・軟部組織感染症を有する1~17歳の小児患者を対象に、年齢に基づく用量のキュビシン®を最長14日間静脈内投与した際の安全性を標準治療と比較検討する。 副次目的:グラム陽性菌による複雑性皮膚・軟部組織感染症を有する1~17歳の小児患者を対象に、年齢に基づく用量のキュビシン®を最長14日間静脈内投与した際の有効性を標準治療と比較検討し、ノンコンパートメント法及び母集団薬物動態解析に基づいて、薬物動態を検討する。 |
対象: | グラム陽性菌による複雑性皮膚・軟部組織感染症の診断又は疑いにより抗菌薬の静脈内投与を受けている腎機能障害[推定クレアチニンクリアランス(CLcr)<80mL/min/1.73m2]のない1~17歳の外国人小児患者 複雑性皮膚・軟部組織感染症関連の臨床徴候及び症状[疼痛、触診に対する圧痛、口腔内体温>37.5℃、直腸、前額部又は鼓膜体温>38℃、白血球数>12,000/㎜3又は桿状核球≥10%、腫脹又は硬結、紅斑(創傷又は膿瘍の境界から>1cm)、又は膿生成のうち、3項目以上]を有する患者 |
例数: | 安全性解析対象例数:キュビシン®群256例、標準治療群133例 有効性解析対象例数:ITT※2;キュビシン®群257例、標準治療群132例、 MITT※3;キュビシン®群210例、標準治療群105例、 ME※4;キュビシン®群167例、標準治療群78例 |
方法: | 患者を年齢群で層別し(12~17歳、7~11歳、2~6歳、1~2歳未満)、キュビシン®群又は標準治療群に2:1の比で無作為に割り付けた。年齢に基づく用量のキュビシン®又は標準治療薬を、最長14日間点滴静注した。明らかな臨床的改善と経口抗菌薬に対する病原菌の感受性が示された場合、治験薬の静脈内投与を終了し、経口治験薬投与への切替えを可能とした。経口治験薬の選択は、治験担当医師の判断に基づいた。 用法及び用量 キュビシン®群: 標準治療群:推奨される標準治療は、バンコマイシン、クリンダマイシン又は半合成ペニシリン(nafcillin:国内未承認、オキサシリン及びクロキサシリン:国内販売中止)とし、治験担当医師が適切と判断した標準治療薬を点滴静注した。 |
評価項目: | 〈主要評価項目(安全性)〉 有害事象、重篤な有害事象、臨床検査値(血清クレアチンホスホキナーゼ値を含む)、身体所見及び神経学的所見の変化、バイタルサイン 〈副次評価項目(有効性)〉 治癒判定時※5の臨床効果(治験依頼者判定)、治癒判定時の細菌学的効果(盲検治験依頼者医学専門家判定)、総合治療効果 |
解析計画: | 本試験では正式な仮説検定は計画されず、記述統計量を用いて投与群間の差を評価した。 主要目的である安全性の解析は、安全性解析対象集団※6を対象とした。全ての安全性パラメータの臨床的検討と解釈により、安全性を評価した。安全性データは、投与群別、年齢群別に集計した。 有効性の解析集団は、臨床効果についてはITT集団、細菌学的効果についてはMITT集団とした。治癒判定時の臨床効果(治験依頼者判定)、臨床効果(盲検治験担当医師判定)、患者別の細菌学的効果、原因菌別の細菌学的効果及び総合治療効果の有効率について、群間差の95%信頼区間を算出した。副次評価項目は、投与群別、年齢群別に解析した。なお、副次評価項目のうち、臨床効果(治験依頼者判定)を主たる解析項目とした。また、ベースライン時の原因菌(MSSA、MRSA、Streptococcus pyogenes)別、及び静注治験薬の投与期間(≤7日、>7日)別、経口治験薬切替え状況(切替なし、切替あり)別のサブグループ解析を実施した。 |
※1 評価者盲検:有効性及び安全性評価におけるバイアス回避のため、各医療機関では、治験開始前に盲検治験担当医師(blinded Evaluator)が指名された。盲検治験担当医師は、治験に関する以下の項目について対応し、その他の治験関連項目は、非盲検の治験担当医師が対応した。
・有害事象と治験薬との因果関係判定
・試験期間中[治験薬の投与開始前、静注治験薬の投与期間中は毎日、治験薬投与終了時(静注治験薬の投与終了時及び経口治験薬の投与終了時)及び治癒判定時]の主要感染部位の症状及び徴候の評価
・静注治験薬の投与期間の決定(当該患者の臨床効果に基づき、静注治験薬の投与終了の判断)
・静注治験薬から経口治験薬への移行に関する判断(必要な場合)
・当該患者の臨床効果の判定(治験薬投与開始前の主要感染部位の症状及び徴候を、治験薬投与終了時及び治癒判定時の症状及び徴候と比較し、判定する)
※2 ITT:無作為化され、治験薬の投与を1回以上受けた全ての患者
※3 MITT:ITT集団のうち、ベースライン時の培養によりグラム陽性菌を有する患者
※4 ME:CE集団のうち、ベースライン時にグラム陽性菌が培養された患者
CE:ITT集団のうち、以下の基準に合致した患者
・試験対象感染症に関する臨床基準に合致した(複雑性皮膚・軟部組織感染症の確定例)
・治験薬を無作為化内容(種類、用量)どおり投与された
・治験薬(静注治験薬+経口治験薬)を3日間以上投与、又は3日未満の投与かつ「無効」と判定された
・治癒判定時に臨床効果の評価で「判定不能」と判定されていない
・有効な抗菌薬(治験薬以外)を投与されていない
・主要感染部位に対する根治的外科処置を受けていない
※5 治癒判定時:治験薬(静注治験薬及び経口治験薬)の最終投与後7~14日
※6 安全性解析対象集団:治験薬を1回以上投与され、投与後の安全性評価データを有する全ての患者。無作為割付の内容にかかわらず、実際に投与された治験薬に基づき、集計された。
キュビシン®の4. 効能又は効果
〈適応菌種〉ダプトマイシンに感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
〈適応症〉敗血症、感染性心内膜炎※、深在性皮膚感染症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染
※感染性心内膜炎は、小児では適応外
キュビシン®の5. 効能又は効果に関連する注意(抜粋)
〈感染性心内膜炎〉
5.3 成人の右心系感染性心内膜炎にのみ使用すること。左心系感染性心内膜炎に対して、国内での使用経験はなく、海外でも有効性は認められていない。また、小児の感染性心内膜炎に対する有効性及び安全性は確認されていない。
■安全性[主要評価項目]
1)有害事象
安全性解析対象集団でのキュビシン®群における有害事象は、256例中98例(38.3%)に認められ、主な有害事象(発現率5%以上)は、下痢18例(7.0%)及び血中クレアチンホスホキナーゼ増加14例(5.5%)でした。重篤な有害事象は、256例中6例(2.3%)に認められ、主な重篤な有害事象(2例以上に発現)は、発熱2例でした。投与中止に至った有害事象は、嘔吐及び下痢各2例、嚥下障害、発熱、皮下組織膿瘍、単球数増加、そう痒症、全身性皮疹及び斑状丘疹状皮疹各1例でした。
安全性解析対象集団での標準治療群における有害事象は、133例中48例(36.1%)に認められ、主な有害事象(発現率5%以上)は、下痢7例(5.3%)及び血中クレアチンホスホキナーゼ増加7例(5.3%)でした。重篤な有害事象は、133例中3例(2.3%)に認められ、菌血症、骨髄炎及び中毒性ショック症候群各1例でした。投与中止に至った有害事象は、嘔吐、口唇腫脹、注入部位血管外漏出、過敏症、菌血症、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、脱水、紅斑及び蕁麻疹各1例でした。
2)副作用
安全性解析対象集団でのキュビシン®群における副作用は、256例中35例(13.7%)に認められ、主な副作用(発現率2%以上)は、下痢14例(5.5%)及び血中クレアチンホスホキナーゼ増加5例(2.0%)でした。重篤な副作用は、12~17歳の1例で報告された血中クレアチンホスホキナーゼ増加でした。投与中止に至った副作用は、4例(12~17歳:嚥下障害1例、7~11歳:全身性皮疹1例、2~6歳:斑状丘疹状皮疹及びそう痒症、下痢及び嘔吐の計2例)に認められました。本試験において死亡例は認められませんでした。
安全性解析対象集団での標準治療群における副作用は、133例中22例(16.5%)に認められ、主な副作用(発現率2%以上)は、下痢4例(3.0%)及び血中クレアチンホスホキナーゼ増加3例(2.3%)でした。投与中止に至った副作用は、5例(2~6歳:嘔吐、口唇腫脹及び紅斑、過敏症、蕁麻疹の計4例、1~2歳未満:注入部位血管外漏出の1例)に認められました。本試験において重篤な副作用、死亡例は認められませんでした。
●有害事象及び副作用の概要(安全性解析対象集団、盲検治験担当医師判定)
■治癒判定時の臨床効果[副次評価項目]
ITTにおける臨床効果の有効率は、キュビシン®群が88.3%(227/257例)、標準治療群が86.4%(114/132例)でした(差の95%信頼区間:-5.1, 9.1)。
●治癒判定時の臨床効果(ITT、治験依頼者判定)
■MRSA感染患者における治癒判定時の臨床効果[サブグループ解析]
サブグループ解析として、ITTのうちベースライン時にMRSA感染が確認された患者における臨床効果の有効率は、キュビシン®群が82.5%(80/97例)、標準治療群が91.3%(42/46例)でした(差の95%信頼区間:-20.0, 2.2)。
●治癒判定時の臨床効果(ITT-MRSA、治験依頼者判定)
有効性の判定基準:〈臨床効果〉(治験依頼者判定)
治癒判定時※1の臨床効果(盲検治験担当医師判定)に基づき、盲検治験依頼者医学専門家(blinded medical monitor)※2が有効性評価に影響を及ぼす可能性のある因子(治療的処置、治験薬以外の有効な抗菌薬など)を踏まえて、有効、無効又は評価不能の3段階で判定した。
※1 治癒判定時:治験薬(静注治験薬及び経口治験薬)の最終投与後7~14日
※2 盲検治験依頼者医学専門家は、試験期間を通じて盲検性が維持された。患者の割付け内容が盲検化された資料を基に判定した。
■治癒判定時の細菌学的効果[副次評価項目]
MITTにおける細菌学的効果の有効率は、キュビシン®群が90.5%(190/210例)、標準治療群が88.6%(93/105例)でした(差の95%信頼区間:-5.4, 9.2)。
●治癒判定時の細菌学的効果(MITT、盲検治験依頼者医学専門家判定)
■MRSA感染患者における治癒判定時の細菌学的効果[サブグループ解析]
サブグループ解析として、MITTのうちベースライン時にMRSA感染が確認された患者における細菌学的効果は、キュビシン®群が84.5%(82/97例)、標準治療群が89.1%(41/46例)でした(差の95%信頼区間:-16.1, 6.9)。
●治癒判定時の細菌学的効果(MITT-MRSA、盲検治験依頼者医学専門家判定)
■治癒判定時の総合治療効果[副次評価項目]
MEにおける総合治療効果の有効率は、キュビシン®群が97.0%(162/167例)、標準治療群が98.7%(77/78例)でした(差の95%信頼区間:-5.3, 1.9)。
●治癒判定時の総合治療効果(ME)
有効性の判定基準:
〈細菌学的効果〉(盲検治験依頼者医学専門家判定)
原因菌別の細菌学的効果は、盲検治験依頼者医学専門家※1がベースライン時の原因菌の評価に基づき、治癒判定時※2に原因菌別の細菌学的効果を消失、推定消失、推定存続、存続、判定不能又は該当せずの6段階で判定した。消失及び推定消失を細菌学的有効とした。
患者別の細菌学的効果は、患者の全てのベースライン時原因菌に対する原因菌別の細菌学的効果及び治験薬投与開始後のグラム陽性菌の重複感染※3の有無に基づき、有効、無効又は判定不能の3段階で判定した。
〈総合治療効果〉
治癒判定時※2の患者の臨床効果(治験依頼者判定)及び細菌学的効果がいずれも有効であった場合、総合治療効果が有効とした。
※1 盲検治験依頼者医学専門家は、試験期間を通じて盲検性が維持された。患者の割付け内容が盲検化された資料を基に判定した。
※2 治癒判定時:治験薬(静注治験薬及び経口治験薬)の最終投与後7~14日
※3 ベースライン時に検出された感染の原因菌とは異なるグラム陽性菌、グラム陰性菌又は真菌を治療期から治癒判定時までに新たに検出し、盲検治験依頼者医学専門家が原因菌と判定した。