高橋 將人 先生(北海道大学病院 乳腺外科 教授):KEYNOTE-522試験(高リスク早期)
高リスクの早期TNBC*に対する術前・術後免疫療法としてのキイトルーダ®の臨床成績 Vol.1
*TNBC(triple negative breast cancer):ホルモン受容体陰性かつHER2陰性の乳癌
取材日:2022年11月25日
Question一覧【クリックで各Q&Aへ移動します】
Q1 実臨床におけるキイトルーダ®による術前・術後免疫療法の対象は?
Q2 早期TNBCでは、なぜPD-L1検査は不要なのですか?
Q4 dose-dense AC又はECとの併用は可能ですか?
Q6 KEYNOTE-522試験における術後の遠隔再発のイベント発現の割合は?
Q1
実臨床におけるキイトルーダ®による術前・術後免疫療法の対象は?
A
KEYNOTE-522試験1-3)の対象患者(M0かつT1c N1-2、T2-4 N0-2)が、実臨床でも対象になると考えます。
解説
キイトルーダ®の電子添文には、〔5.22 臨床試験に組み入れられた患者の再発高リスクの定義等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。〕との記載があり、KEYNOTE-522試験の再発高リスクの定義に該当する患者が投与対象になると考えられます。
当該定義に該当しない周術期の乳癌患者に対する本剤の有効性及び安全性データは得られていません。なお、自己免疫疾患及び間質性肺疾患など、特定の背景を有する患者に関する注意は、電子添文をご確認ください。
1)承認時評価資料: 国際共同第Ⅲ相試験(KEYNOTE-522試験)
2)Schmid P et al. N Engl J Med 2020; 382: 810-821
3)Schmid P et al. N Engl J Med 2022; 386: 556-567
本試験はMSD社の資金提供により行われた。Peter SchmidはMSD社からコンサルタント料を受領している。また、著者のうち、Yu Ding、Konstantinos Tryfonidis、Vassiliki Karantza、Gursel Aktan、Liyi Jia、Jing Zhaoは同社の社員である。その他の著者にMSD社よりコンサルタント料、講演料などを受領している者が含まれる。
Q2
早期TNBCでは、なぜPD-L1検査は不要なのですか?
A
早期TNBCにおいては、PD-L1検査がキイトルーダ®の効果予測におけるバイオマーカーにならなかったためです。
解説
ITT集団において、主要評価項目であるEFSの優越性が検証されました。また、事前に規定されたEFSのサブグループ解析において、CPS≧1のハザード比は0.67、CPS<1のハザード比は0.48でした。現時点で、PD-L1がキイトルーダ®の効果予測因子にならなかったメカニズムは不明です。早期TNBCの場合、電子添文においてもPD-L1検査が必要という記載はございません。
Q3
早期TNBCに対するプラチナ製剤の位置付けは?
A
乳癌診療ガイドライン2022年版 ①治療編のCQ17において、「トリプルネガティブ早期乳癌に対してプラチナ製剤の投与」は強く推奨されております1)。
補足
早期TNBCを対象としたKEYNOTE-522試験は、術前薬物療法①としてキイトルーダ®とプラチナ製剤であるカルボプラチン及びパクリタキセルを併用した後に、術前薬物療法②としてキイトルーダ®とAC又はECを併用し、術後薬物療法としてキイトルーダ®を単剤投与するとなっており、プラチナ製剤が含まれているレジメンが採用されています2-4)。なお、乳癌診療ガイドライン2022年版 ①治療編のCQ16において、「周術期トリプルネガティブ乳癌に対して免疫チェックポイント阻害薬の投与」は弱く推奨されています5)。
1)日本乳癌学会 編.乳癌診療ガイドライン2022年版 ①治療編.金原出版,p119,2022
2)承認時評価資料: 国際共同第Ⅲ相試験(KEYNOTE-522試験)
3)Schmid P et al. N Engl J Med 2020; 382: 810-821
4)Schmid P et al. N Engl J Med 2022; 386: 556-567
本試験はMSD社の資金提供により行われた。Peter SchmidはMSD社からコンサルタント料を受領している。また、著者のうち、Yu Ding、Konstantinos Tryfonidis、Vassiliki Karantza、Gursel Aktan、Liyi Jia、Jing Zhaoは同社の社員である。その他の著者にMSD社よりコンサルタント料、講演料などを受領している者が含まれる。
5)日本乳癌学会 編.乳癌診療ガイドライン2022年版 ①治療編.金原出版,p117,2022
Q4
dose-dense AC又はECとの併用は可能ですか?
A
KEYNOTE-522レジメン1-3)で、dose-dense AC又はECと併用することは推奨されません。
解説
KEYNOTE-522試験において、dose-dense AC又はECの併用は設定されておらず、dose-dense AC又はECを併用した場合の有効性及び安全性データは得られておりません*。
* キイトルーダ®の電子添文には、〔7.5 本剤の用法及び併用する他の抗悪性腫瘍剤は「17.臨床成績」の項の内容を熟知し選択すること。〕との記載があり、KEYNOTE-522試験の併用薬が投与可能と考えられます。
1)承認時評価資料: 国際共同第Ⅲ相試験(KEYNOTE-522試験)
2)Schmid P et al. N Engl J Med 2020; 382: 810-821
3)Schmid P et al. N Engl J Med 2022; 386: 556-567
本試験はMSD社の資金提供により行われた。Peter SchmidはMSD社からコンサルタント料を受領している。また、著者のうち、Yu Ding、Konstantinos Tryfonidis、Vassiliki Karantza、Gursel Aktan、Liyi Jia、Jing Zhaoは同社の社員である。その他の著者にMSD社よりコンサルタント料、講演料などを受領している者が含まれる。
Q5
KEYNOTE-522試験におけるpCR率は?
A
キイトルーダ®群のpCR率(ypT0/Tis ypN0)は64.8%、プラセボ群は51.2%であり、13.6%の有意な改善が認められました(検証的解析結果)。
解説
キイトルーダ®群及びプラセボ群の化学療法には、標準療法であるAC又はEC+パクリタキセルに、プラチナ製剤であるカルボプラチンが上乗せ投与されていました。臨床試験結果を評価する際には、対照群がどのような設定になっているかを確認することも重要と考えます。
Q6
KEYNOTE-522試験における術後の遠隔再発のイベント発現の割合は?
A
術後の遠隔再発の割合はキイトルーダ®群で7.7%、プラセボ群で13.1%でした。
解説
ITT集団において、主要評価項目であるEFSの優越性が検証されました。様々なイベントが報告されていますが、最も多かったのは術後の遠隔再発で、キイトルーダ®群は7.7%、プラセボ群は13.1%でした。
術後の無遠隔再発生存期間についても探索的に評価され、キイトルーダ®群のプラセボ群に対するハザード比は0.60(95%CI: 0.43, 0.82)であったと報告されています。