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スクリーニング検査

スクリーニング検査


血液検査

軽症の肺高血圧症では、血液検査値に異常がないこともあります1)。右心負荷が生じると、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が上昇します2)。さらにうっ血肝を呈すると、肝機能異常を示します1)
CTEPHの場合には、Dダイマーが上昇することがありますが、血栓がすでに器質化している場合には、上昇しない場合もあります2)
また、易血栓性の確認のため、プロテインC欠損、プロテインS欠損、アンチトロンビンⅢ欠損、抗リン脂質症候群の有無の確認を行います2)


血液ガス分析3)

動脈血ガス分析では、換気/血流比の異常による低酸素血症が反映されます。
CTEPHの場合、PaO2※1、PaCO2※2がともに低下し、A-aDO2※3が開大します。

※1 PaO2:arterial partial pressure of oxygen(動脈血酸素分圧)
※2 PaCO2:arterial partial pressure of carbon dioxide(動脈血二酸化炭素分圧)
※3 A-aDO2:alveolar-arterial O2 tension difference/gradient(肺胞気動脈血酸素分圧較差)


胸部X線写真

初期には異常が認められないこともありますが、右肺動脈上葉分岐後の下行枝の拡大、右第 2 弓拡大(右房拡大を示唆)、左第2弓突出(主肺動脈の拡大を示唆)などの所見がみられることがあります。肺野では、透過性亢進と血管陰影減少を認め、肺野血管陰影には局所的な差がみられることがあります2)


心電図検査

CTEPHに特異的な所見はなく、肺高血圧症の進展に伴って、右室負荷、右房負荷を呈します4)。肺高血圧症が中等から重度になると右軸偏位、V1の高いR波あるいはR/S>1、V5でのS≧7mmまたはR/S≦1などがみられます3,4)


心エコー法

肺高血圧症により、右心負荷を生じると、右室拡大や心室中隔の扁平化、三尖弁逆流圧較差40mmHg以上(三尖弁逆流ピーク速度>2.8m/s)、三尖弁輪収縮期偏位の低下などがみられます2,5)。三尖弁逆流ピーク速度のみでは肺高血圧症の確定診断はできないため、心エコー法による検査結果をもとに、右心カテーテル法などのさらなる検査を実施するかを検討します5)

CTEPHの診断基準はこちら >

References

1)日本循環器学会. 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)
2)近藤隆久 他. 現代医学. 67, 20(2020)
3)難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究班. 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(指定難病88). 難病情報センター.
http://www.nanbyou.or.jp/entry/307
4)佐藤徹.日本内科学会雑誌. 107, 234(2018)
5)Humbert M, et al. Eur Heart J. 43, 3618(2022)


CTEPH(慢性血栓塞栓性肺高血圧症)の診断