子宮頸がんの疫学
子宮頸がんの疫学
罹患率と死亡率
●世界における子宮頸がんの罹患率と死亡率(海外データ)
世界では、年間約60万人の女性が子宮頸がんに罹患し、約34万人が子宮頸がんによって死亡しています(図1)1)。
図1:世界における子宮頸がんの罹患数と死亡数(2020)
ICO/IARC Information Centre on HPV and Cancer (HPV Information Centre), 2021 より作図
http://www.hpvcentre.net/statistics/reports/XWX.pdf (Accessed Oct. 24, 2022)
●日本における子宮頸がんの罹患率と死亡率
日本では、年間約10,000人の女性が子宮頸がんに罹患し2)、約2,900人が子宮頸がんによって死亡しています3)。日本における子宮頸がんの罹患率および死亡率は増加傾向にあります(図2)。
* 罹患率は上皮内がんを含む。
図2:日本における子宮頸がんの罹患率と死亡率(年齢調整後)
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」
(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ))高精度地域実測値:がん罹患年次推移データ(1985年~2015年) より作図
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」
(厚生労働省人口動態統計)全国がん死亡データ(1958年~2020年) より作図
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html (Accessed Oct. 24, 2022)
●がんの年齢調整死亡率(75歳未満)の変化率
近年の医療技術の進歩により、がんは治療できる時代となりました。死亡率の変化率が減少するがん種がある一方で、子宮頸がんは増加傾向にあります(図3)4)。
図3:がんの年齢調整死亡率(75歳未満)の変化率
国立がん研究センター がんの75歳未満年齢調整死亡率2015年集計結果
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2016/1221/index2.html (Accessed Oct. 24, 2022)
●日本における20〜30歳代の女性特有のがんの罹患率と死亡率の年次推移
20〜30歳代の世代における女性特有のがんについてみてみると、乳がんや卵巣がん、子宮体がんと比較して、子宮頸がんの罹患率は増加傾向にあります(図4)2)。また、死亡率においても、他のがん種では、ほぼ横ばいの推移となっている一方、子宮頸がんの死亡率は増加傾向にあります(図4)3)。
* 罹患率は上皮内がんを含む。
図4:日本における年代別子宮頸がん罹患率
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」
(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ))全国推計値:がん罹患データ(1975年~2015年) より作図
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html (Accessed Oct. 24, 2022)
年齢別罹患率
●女性の出産年齢と年齢別子宮頸がん罹患率
20〜30歳代は、出産を迎える時期でもあります。特に近年は、出産年齢のピークが30歳代前半となっており、子宮頸がんの罹患年齢のピークと重なっています(図5) 。このため、子宮頸がんは「マザーキラー」とも呼ばれます。
図5:女性の出産年齢と年齢別子宮頸がん罹患率
厚生労働省 平成27年人口動態統計月報年計(概数)の概況 母の年齢(5歳階級)・出生順位別にみた出生数の年次推移 より作図
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai15/ (Accessed Oct. 24, 2022)
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」
(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ))全国推計値:がん罹患データ(1975年〜2015年) より作図
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html (Accessed Oct. 24, 2022)
●子宮頸がん種別の動向(大阪府がん登録)
子宮頸がんの組織型である扁平上皮がんおよび腺がんは近年ともに増加傾向に転じています(図6)5)。特に腺がんは、30歳代以下の若年層で増加しています(図6)5)。
子宮頸部腺がんは、がん検診でおこなう細胞診では採取しにくい場所に存在し、コルポスコープ(拡大鏡)でも見えにくいとされています6)。
図6:子宮頸がん種別の動向(大阪府がん登録)
【対象】1976~2012年に大阪府がん登録データに登録された子宮頸がん患者25,826例
【方法】子宮頸がんの種類別、年齢層別、進行ステージ別、治療方法別の罹患率について検討した。
ここでは扁平上皮がんおよび腺がんにおける年齢層別の年齢調整罹患率を示す。
Yagi A et al. Cancer Res. 2019; 79: 1252-1259.
参考文献
1) ICO/IARC Information Centre on HPV and Cancer (HPV Information Centre), 2021
http://www.hpvcentre.net/statistics/reports/XWX.pdf (Accessed Oct. 24, 2022)
2) 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ))全国推計値:がん罹患データ(1975年〜2015年)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html (Accessed Oct. 24, 2022)
3) 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)全国がん死亡データ(1958年〜2020年)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html (Accessed Oct. 24, 2022)
4) 国立がん研究センター がんの75歳未満年齢調整死亡率2015年集計結果
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2016/1221/index2.html (Accessed Oct. 24, 2022)
5) Yagi A et al. Cancer Res. 2019; 79: 1252-1259.
6) 日本婦人科腫瘍学会 編:子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドラインの解説 第1版 金原出版:36-37.