HPVワクチンと9歳以上の定期接種ワクチン
HPVワクチンと9歳以上の定期接種ワクチン
シルガード®9およびガーダシル®の「接種不適当者」等、その他の項目は電子添文をご参照ください。
HPVワクチンの定期接種対象者は、小学校6年生〜高校1年生相当の女子です。
定期接種が可能となる小学校6年生と近い時期に接種するほかの定期接種ワクチンとして、日本脳炎ワクチンや二種混合(DT)ワクチンがあります。
女性にとって小児期最後の定期接種であるHPVワクチンは、連続性をもったワクチン接種の推奨により接種率の向上が期待されます。
●子どもの定期接種ワクチンとその実施率
日本における子どもの定期接種ワクチンの実施率は高い水準となっており、乳児期では90%を超えています。一方で、HPVワクチンの実施率は、2021年度で26.2%となっています(図1)。
HPVワクチンは2013年4月に定期接種に導入されましたが、ワクチン接種後にあらわれた「多様な症状」の副反応疑い報告を受け、厚生労働省が積極的接種勧奨の一時差し控えを発表しました。その後、厚生労働省は、様々な調査を行い、副反応検討部会において継続的な検討を行った結果、HPVワクチンの安全性について特段の懸念が認められないことが確認され、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると認められました1)。
HPVワクチンは定期接種でありながら、2017年度の実施率は0.3%とほぼ接種されていない時期もありました。2022年4月に積極的な個別勧奨が再開され、実施率は26.2%と増加傾向ではありますが、未だ他の定期接種ワクチンと比較して低い水準となっています2)。
図1:子どもの定期接種ワクチンとその実施率(2021年度)
特定非営利活動法人 VPDを知って、子どもを守ろうの会 2023年4月版予防接種スケジュール
https://www.know-vpd.jp/dl/schedule_age7_202304.pdf (Accessed Dec. 4, 2023)
厚生労働省 定期の予防接種実施者数 より作成
https://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/other/5.html (Accessed Dec. 4, 2023)
●9歳以上が接種対象の定期接種ワクチン
9歳以上が対象の定期接種ワクチンには、日本脳炎ワクチン、二種混合(DT)ワクチン、HPVワクチンの3種類があります(2023年12月現在、HPVワクチンの定期接種対象者は女性のみ)。
各ワクチンの標準的な接種期間は、日本脳炎ワクチンで9歳に達した時から10歳に達するまで、DTワクチンで11歳に達した時から12歳に達するまで、HPVワクチンで13歳となる日の属する年度の初日から当該年度の末日までとなっています(図2)。HPVワクチンの定期接種が可能になる小学校6年生は、日本脳炎ワクチンやDTワクチンの定期接種が可能な時期でもあります。
HPVワクチンについて、日本脳炎ワクチンやDTワクチンと連続性をもって接種勧奨をおこなうことにより、HPVワクチンの接種率向上が期待されます。
図2:9歳以上が接種対象の定期接種ワクチン
1) 厚生労働省 2023年3月31日 定期接種実施要領 改正後全文
https://www.mhlw.go.jp/content/001092482.pdf (Accessed Dec. 4, 2023)
2) 予防接種法施行令(昭和二十三年政令第百九十七号) 第三条
●HPVワクチンをより若い年齢で接種する意義
①ガイドラインにおけるHPVワクチン接種の推奨年齢は10〜14歳
「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編 2023」では、HPVワクチンは「まだHPVに感染していない初交前に接種することが重要である」とされています(図3)。
さらに、思春期ではワクチンに対する免疫反応が特によいことから、10〜14歳のより若い年齢の女性における接種が最も優先的に推奨されています。
図3:HPVワクチン接種の対象
日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会 編集・監修 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編 2023. 52-54.
解説より一部抜粋
②医療関係者との接点が減少する前に
厚生労働省が実施した患者調査によると、15〜19歳の年齢階級では一般診療外来を受診する機会が少なく、特に医療関係者との接点が減少することが報告されています(図4)。接種対象者と医療関係者との接点があるうちにHPVワクチンの接種を開始することで、接種の機会を逃しにくくなる可能性があります。
図4:一般診療外来での年齢階級別の推計患者数:2020年10月
厚生労働省 患者調査 令和2年(2020) 患者調査の概況 結果の概要 1推計患者数 より作成
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/index.html (Accessed Dec. 4, 2023)
③接種回数を減らすことが可能
定期接種対象のHPVワクチンは2価、4価、9価の3種類があります。
一般的な接種スケジュールは(図5)のとおりです。基本的にはいずれのワクチンも合計3回の接種スケジュールとなっています。
9価HPVワクチン(シルガード®︎9)は9歳以上15歳未満の女性であれば合計2回の接種で完了することも可能です。15歳になるまでにHPVワクチンを接種することで、通院回数や侵襲機会を減らすなど被接種者の負担を軽減することができます。日本小児科学会もシルガード®︎9の2回接種への理解促進を求めています3)。
図5:定期接種における一般的な接種スケジュール
厚生労働省 医療従事者の方へ ~HPVワクチンに関する情報をまとめています~ より一部抜粋
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000901222.pdf (Accessed Dec. 4, 2023)
参考文献
- 厚生労働省 2021年11月26日 健発1126第1号 ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の今後の対応について(健康局長通知)
https://www.mhlw.go.jp/content/000875155.pdf (Accessed Dec. 4, 2023) - 厚生労働省 定期の予防接種実施者数
https://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/other/5.html (Accessed Dec. 4, 2023) - 日本小児科学会 予防接種・感染症情報「HPVワクチン定期接種促進と正しい接種に向けたご案内」
https://www.jpeds.or.jp/modules/news/index.php?content_id=1220(Accessed Dec. 4, 2023)