HPVワクチンの筋肉内接種について
HPVワクチンは、筋肉内接種のワクチンです。
筋肉内接種の手技や痛みに対するアプローチについてご紹介いたします。
ワクチン接種に対する保護者*の主な不安は?
*:複数回ワクチン接種を受けているお子さんのいる保護者
WHO Position Paper on Reducing Pain at the Time of Vaccination September 2015 より作成
医療従事者がワクチン接種の痛みや苦痛を和らげる手段を知っておくことは大切です
ワクチン接種による痛みは、被接種者や保護者、医療従事者に共通する関心事です。
ワクチン接種に対する保護者の主な不安は、接種に伴う痛みであり、医療従事者にその痛みを軽減してほしい、また、痛みを軽減する方法を学びたいと考えていることから、医療従事者がワクチン接種の痛みや苦痛を和らげる手段を知っておくことは大切です。
皮下接種と筋肉内接種の違いは?
1) 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会 小児に対するワクチンの筋肉内接種法について(改訂第2版)
2) Lindblad EB. Vaccine. 2004; 22: 3658-3668.
3) Cook IF. Hum Vaccine. 2008; 4: 67-73.
4) Laurichesse H et al. Clin Microbiol Infect. 2007; 13: 395-403.
5) RN Lynn, Pamela Taylor’s Clinical Nursing Skills: A Nursing Process Approach
6) 近代出版 予防接種の手びき2020-21年度版 p99-p100.
7) Plotkin‘s Vaccines 7th 2-Vaccine Immunology
8) Zuckerman JN. BMJ. 2000; 321(7271): 1237-1238.
ワクチン接種には主に皮下接種と筋肉内接種の2つがあります。
筋肉内接種は、皮下接種に比べ、局所反応が少ないことが知られています。これは、痛みの神経が皮膚表面に近い方が多く、筋肉内には少ないためです。また、皮下組織の抗原提示細胞による処理割合が大きくなると、この組織での炎症反応が大きくなります。障害された組織については、血液内の血流が豊富な分、修復も早いと考えられています。
筋肉内接種は皮下接種に比べ、免疫反応は同等もしくは高いことが知られています。その根拠としては、皮下組織での抗原の捕捉は、免疫反応を低下させる基となりうることが挙げられます。一方で、血流が豊富な筋肉内の方が、薬剤の吸収速度が速いと考えられています。
接種時の痛み軽減への“5P”アプローチ
Taddio A et al. CMAJ. 2015; 187: 975-982.
※このアプローチでは遅発性疼痛(注射後数時間~数日)は考慮されていない
海外では、医療従事者ができる接種時の痛み軽減について、5つのP、手技的、身体的、心理学的、薬理学的、プロセスによるアプローチが掲げられています。中でも、心理学的なアプローチについては、ワクチン接種への不安解消においても大切であると考えられています。
注射の痛みと不安軽減のための推奨法(思春期)
*1:曝露療法:学習理論を応用し、不安は回避行動をとることで維持・増幅してしまうことから、あえて不安刺激にさらすことで、過剰反応を緩和することを目的とする認知行動療法のひとつ
*2:Applied Tension法:腕や脚、体幹などの筋緊張とリラックスを数十秒ずつ繰り返し、身体を適度なリラックス状態にする方法
接種時の痛み軽減への“5P”アプローチは、接種前、来院時、接種時の適切な段階で行うことが推奨されています。
思春期の予防接種と接種ストレス関連反応
日本産婦人科医会編集 研修ノート(No106 思春期のケア)
WHOは、痛みを含めたワクチン接種環境におけるストレス関連反応について、その理解、予防、診断、マネージメント、コミュニケーションアプローチなどに関するガイダンスを作成しました。