HPVワクチン実施率・接種率の状況
HPVワクチン実施率・接種率の状況
更新日:2024年4月2日
2023年度上半期のHPVワクチンの定期接種の実施状況(表1)
2022年度接種実績をふまえた生まれ年度ごとの累積初回接種率(表2)
HPVワクチンの定期接種の実施状況
「HPVワクチンの定期接種の実施状況」は、厚生労働省の地域保健・健康増進事業報告「定期の予防接種被接種者数」や厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会において定期的に公表されています。
この実施状況は、厚生労働省が各都道府県を通じて全市町村に調査した数値を基に算出されています。「接種者数」 は、12歳となる日の属する年度の初日から16歳となる日の属する年度の末日までの間にある女子で接種した者の数となっています。また、「実施率」は、「接種者数」を対象人口[標準的な接種年齢期間(13歳となる日の属する年度の初日から当該年度の末日までの間)の総人口]で除して算出された値です(図1)1)、2)。
図1:厚生労働省 「HPVワクチンの定期接種の実施状況」における実施率
厚生労働省 2024年1月26日 第100回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 資料3-2 より作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208910_00072.html (Accessed Feb. 29, 2024)
この集計方法は、HPVワクチン以外の他の定期接種ワクチンにおいても同様の方法で集計されており、定期接種ワクチンの大まかな接種状況を把握していくことが可能となっています3)。
一方で、各生まれ年度の接種率は不明であり、また、対象人口は各年度に新規に予防接種対象者に該当した人口であることに対し、接種者数は各年度における接種対象者全体の中の予防接種を受けた人員であるため、実施率は100%を越える場合があるなど、解釈が難しい側面があります4)。
2023年4月から2023年9月までのHPVワクチンの実施状況について、厚生労働省が各都道府県を通じて全市町村に調査を行ったところ、実施状況は以下のとおりでした(表1)1)。
表1:2023年度上半期のHPVワクチンの定期接種の実施状況
厚生労働省 2024年1月26日 第100回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 資料3-1
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208910_00072.html (Accessed Feb. 29, 2024)
HPVワクチンの接種状況に関する検討
現在のHPVワクチンの接種状況の把握のため、HPVワクチンの生まれ年度ごとの接種率を算出する試みとして、2024年1月26日開催の第100回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会において、大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学 上田先生により、2022年度の接種実績を基に「生まれ年度ごとの累積初回接種率」が算出、報告されました2)。
この試算では、2022年度の地域保健・健康増進事業報告の初回HPVワクチン接種者数に対して一定の仮定による補正を行い、生まれ年度ごとの初回接種者数を推計し、その接種者数を各生まれ年度の女性人口で除したものが初回接種率として算出されました。この初回接種率の総和が、「生まれ年度ごとの累積初回接種率」となります(図2) 。
図2:2022年度接種実績をふまえた生まれ年度ごとの累積初回接種率
厚生労働省 2024年1月26日 第100回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 資料3-2
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208910_00072.html (Accessed Feb. 29, 2024)
この方法により算出された、2022年度接種実績をふまえた生まれ年度ごとの累積初回接種率は以下のとおりです(表2)。
表2:2022年度接種実績をふまえた生まれ年度ごとの累積初回接種率
厚生労働省 2024年1月26日 第100回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 資料3-2
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208910_00072.html (Accessed Feb. 29, 2024)
第100回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の中では、HPVワクチンの接種状況に関する検討について、以下のようにまとめとして報告されました。
【まとめ】
- 定期接種、キャッチアップ接種の実施者数から、生まれ年度ごとの2022年度の初回接種率および累積初回接種率を算出した
- 接種率は積極的勧奨再開前から徐々に上昇しているものの、定期接種、キャッチアップ接種とも、緊急促進事業当時ほどには接種が拡がっていない
- 2022年度の定期接種において、標準接種年齢である13歳になる年度での接種率が低く、今後、この年齢でのより積極的な接種が望まれる
- キャッチアップ接種は、1997年度~1999年度生まれで特に接種率が低いが、これらの世代は緊急促進事業の際にすでに一定数接種が実施されている
- 引き続き、HPVワクチン接種、特に、2024年度で終了するキャッチアップ接種について周知広報を行っていくことが重要である
参考文献
- 厚生労働省 2024年1月26日 第100回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 資料3-1
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208910_00072.html (Accessed Feb. 29, 2024) - 厚生労働省 2024年1月26日 第100回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 資料3-2
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208910_00072.html (Accessed Feb. 29, 2024) - 厚生労働省 2024年1月26日 第100回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 議事録
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37620.html (Accessed Feb. 29, 2024) - 厚生労働省 定期の予防接種実施者数
https://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/other/5.html (Accessed Feb. 29, 2024)