定期接種およびキャッチアップ接種
定期接種およびキャッチアップ接種
更新日:2024年3月29日
定期接種およびキャッチアップ接種対象者
2価、4価および9価のHPVワクチンは、定期接種のワクチンです。対象は小学校6年生から高校1年生相当の女子となっています。
また、HPVワクチンの積極的な勧奨の差し控えにより接種機会を逃した女性に対して公平な接種機会を確保することを目的として、キャッチアップ接種が実施されています。対象は、HPVワクチンの積極的な勧奨を差し控えている間に定期接種の対象であった1997年度生まれから2007年度生まれまでの女性(2024年4月時点)、実施期間は、2025年3月末までとなっています(図1)。2024年度に高校1年生相当の女子も、公費で接種できるのは2025年3月末までです。
図1:HPVワクチンの公費助成 2024年度の対象年齢
1) 厚生労働省 2022年3月11日 HPVワクチンに係る自治体向け説明会 資料「令和4年4月からのHPVワクチンの接種について」 より作成
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000911549.pdf (Accessed Mar. 8, 2024)
2) 厚生労働省 平成9年度生まれ~平成19年度生まれまでの女性へ大切なお知らせ(2024年2月改訂版) より作成
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000918718.pdf (Accessed Mar. 8, 2024)
定期接種・キャッチアップ接種の対象となるHPVワクチン
定期接種およびキャッチアップ接種として接種できるHPVワクチンは、2価HPVワクチン、4価HPVワクチン、9価HPVワクチンの3種類があります(表)。
表 HPVワクチンの種類
各製品電子添文より
定期接種におけるHPVワクチンの一般的な接種スケジュール
キャッチアップ接種を含む定期接種として接種できるHPVワクチンの一般的な接種スケジュールは以下のとおりです(図2)。
図2:HPVワクチンの接種スケジュール
厚生労働省 医療従事者の方へ ~HPVワクチンに関する情報をまとめています~ より改変
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000901222.pdf (Accessed Mar. 8, 2024)
9価HPVワクチン(シルガード®9)の用法及び用量は以下のとおりです。
6. 用法及び用量
9歳以上の女性に、1回0.5mLを合計3回、筋肉内に注射する。通常、2回目は初回接種の2ヵ月後、3回目は6ヵ月後に同様の用法で接種する。
9歳以上15歳未満の女性は、初回接種から6~12ヵ月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができる。
7. 用法及び用量に関連する注意
7.1.1 9歳以上の女性に合計3回の接種をする場合、1年以内に3回の接種を終了することが望ましい。なお、本剤の2回目及び3回目の接種が初回接種の2ヵ月後及び6ヵ月後にできない場合、2回目接種は初回接種から少なくとも1ヵ月以上、3回目接種は2回目接種から少なくとも3ヵ月以上間隔を置いて実施すること。
7.1.2 9歳以上15歳未満の女性に合計2回の接種をする場合、13ヵ月後までに接種することが望ましい。なお、本剤の2回目の接種を初回接種から6ヵ月以上間隔を置いて実施できない場合、2回目の接種は初回接種から少なくとも5ヵ月以上間隔を置いて実施すること。
2回目の接種が初回接種から5ヵ月後未満であった場合、3回目の接種を実施すること。この場合、3回目の接種は2回目の接種から少なくとも3ヵ月以上間隔を置いて実施すること。
7.2 同時接種
医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができる。[14.1.1 参照]
4価HPVワクチン(ガーダシル®)の用法及び用量は以下のとおりです。
6. 用法及び用量
9歳以上の者に、1回0.5mLを合計3回、筋肉内に注射する。通常、2回目は初回接種の2ヵ月後、3回目は6ヵ月後に同様の用法で接種する。
7. 用法及び用量に関連する注意
7.1 接種間隔
1年以内に3回の接種を終了することが望ましい。なお、本剤の2回目及び3回目の接種が初回接種の2ヵ月後及び6ヵ月後にできない場合、2回目接種は初回接種から少なくとも1ヵ月以上、3回目接種は2回目接種から少なくとも3ヵ月以上間隔を置いて実施すること。
7.2 同時接種
医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができる。[14.1.1 参照]
HPVワクチンの接種間隔短縮に対する対応
公費助成による定期接種およびキャッチアップ接種では、予防接種実施要領等の規則にあてはまらないものは法定外として取り扱われることがあります。その場合、公費助成の対象から外れるため、自治体によっては任意接種(自費)と判断され、自治体からの公費助成を受けられない場合があります。
HPVワクチン接種を定期接種およびキャッチアップ接種として行う場合には、「接種間隔」について定期接種実施要領を遵守する必要があります。
HPVワクチンの実施要領は、各HPVワクチンの電子添文に記載されている「接種間隔」と同じです。なお、定期接種では、1ヵ月の期間は4週間又は30日という解釈はせず、暦に従うことになっています(図3)。
図3:定期接種実施要領における接種間隔例
日本産科婦人科学会 2022年5月19日 「HPVワクチンの定期接種、キャッチアップ接種の接種間隔短縮に対する対応」 より一部抜粋
https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20220519_shuuchiirai.pdf (Accessed Mar. 8, 2024)
HPVワクチンのキャッチアップ接種に関するQ&A
- Q 性交渉の経験がある人に接種は可能か?
- Q 年齢により効果に差はあるのか?
- Q 過去に接種したかどうか不明な場合にはどうすべきか?
- Q 妊娠している可能性がある場合、接種しても問題ないか?また、接種スケジュールの途中で妊娠が判明した場合、その後の接種は?
- Q HPVワクチンを接種すれば子宮頸がん検診は必要ないのか?
Q 性交渉の経験がある人に接種は可能か?
初めての性交渉より前にHPVワクチン接種をすることが最も効果的ですが、性交渉の経験があっても、HPVワクチンに含まれるHPV型に未感染であれば、その未感染HPV型の将来の感染予防が期待できるため、接種は可能です。
既に感染しているHPV型に対する治療的効果はないため、既感染者を含む集団ではHPV16・18型に関連した前がん病変の発生予防効果は約30~60%とされています。
日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会 編集・監修 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編 2023: 52-54.
Q 年齢により効果に差はあるのか?
HPVワクチンに対する免疫応答は年齢とともに減少しますが、HPVワクチンに含まれるHPV型に未感染の場合、そのHPV型による疾患に対し45歳までの有効性が認められています。
- 9~45歳の女性23,951例を対象に免疫原性を評価した海外第Ⅲ相臨床試験において、3回目接種の1ヵ月後の抗体陽転率は96.4~99.9%でした。なお、HPV抗体価の幾何平均(GMT)は接種年齢とともに漸減し、免疫反応の持続性(抗体陽性率)について、48ヵ月時点では9~15歳で最も高く、35~45歳で最も低いことが認められていますが、予防効果は維持していました1)。
- 一方で、既に感染しているHPV型に対する治療的効果はないため、初めての性交渉より前(初交前)にワクチン接種をすることが最も効果的です。
- 産婦人科診療ガイドラインでは、HPVワクチン接種の対象とその解説に、以下の点が触れられています(図4)2)。
図4:HPVワクチン接種の対象(産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編)
1) ガーダシル® 電子添文
2)日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会 編集・監修 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編 2023: 52-54.
Q 過去に接種したかどうか不明な場合にはどうすべきか?
現時点(2024年3月現在)で、国内における指針やガイドラインはありません。
母子健康手帳などで可能な限り接種記録をご確認ください。
- 米国予防接種諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices:ACIP)のガイドラインでは、ワクチン接種記録は極力確認すべきだが、もし見つからない場合にスケジュールを延期すべきではなく、該当する年齢に応じた接種スケジュールで接種を再開すべきとされています。
Kroger AT et al. MMWR Recomm Rep. 2011; 60(RR-02): 1-60.
Q 妊娠している可能性がある場合、接種しても問題ないか?また、接種スケジュールの途中で妊娠が判明した場合、その後の接種は?
妊婦または妊娠している可能性のある女性に対する安全性は確立していないため、原則として接種しないでください。
また、接種が完了する前に妊娠が判明した場合は、出産後まで接種を延期してください。なお、その場合、最初から接種をやり直す必要はありません。
Q HPVワクチンを接種すれば子宮頸がん検診は必要ないのか?
HPVワクチンではすべての発がん性HPV型の感染を予防できないため、ワクチン接種後も子宮頸がん検診は必要です。
20歳を過ぎたら定期的に検診を受診してください。
- HPVワクチンには、既に感染しているHPVの排除や、子宮頸部病変の治療的効果はありません。
- HPVワクチン接種後も定期的に子宮頸がん検診を受け、早期発見に努めることが重要です。
日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会 編集・監修 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編 2023: 55-57.
図5:子宮頸がん予防について
厚生労働省 小学校6年〜高校1年相当の女の子と保護者の方へ大切なお知らせ(詳細版)