TMB-High固形癌とは
TMB-High固形癌とは
腫瘍遺伝子変異量(TMB)は、腫瘍ゲノムにおける体細胞変異の総量です。
高い腫瘍遺伝子変異量(TMB-High)では、免疫応答を誘導する腫瘍特異抗原(ネオアンチゲン)が多く産生されると考えられています
- TMBは、腫瘍ゲノムにおける体細胞変異の総量です1)。
– TMBの高低は、TMBスコアとして100万個の塩基(megabase: Mb)あたりの変異塩基数(single nucleotide variation: SNV)としてmut/Mb(mutations/megabase)の単位で示されます2)。 - いくつかの生物学的因子がTMB-Highと関連することが報告されています3-8)。
– 悪性黒色腫では紫外線、非小細胞肺癌ではタバコ由来の化学物質に曝されることにより、TMBが高くなる場合があります。
– MSI-High固形癌、DNAポリメラーゼをコードするPOLEやPOLD1遺伝子に異常を有する癌ではTMBが高くなる場合があります。 - TMB-Highを有する固形癌(TMB-High固形癌)では、体細胞変異の蓄積により免疫応答を誘導する腫瘍特異抗原(ネオアンチゲン)が多く産生されるため、T細胞に認識されやすくなると考えられています8,9)。
- TMB-Highは、免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を予測するバイオマーカーとして近年注目されています9,10)。
1)Stenzinger A et al. Genes Chromosomes Cancer 2019; 58: 578-588
著者にMSD社から講演料を受領している者が含まれる
2)千田圭悟 他. 病理と臨床 2020; 38: 402-407
3)Alexandrov LB et al. Nature 2013; 500: 415-421
4)Lawrence MS et al. Nature 2013; 499: 214-218
5)Zehir A et al. Nat Med 2017; 23: 703-713
6)Chalmers ZR et al. Genome Med 2017; 9: 34
7)Campbell BB et al. Cell 2017; 171: 1042-1056. e10
8)Efremova M et al. Front Immunol 2017; 8: 1679
9)Chan TA et al. Ann Oncol 2019; 30: 44-56
著者にMSD社から講演料などを受領している者が含まれる
10)Wu Y et al. Front Immunol 2019; 9: 116
TMB-High固形癌は、多岐にわたるがん種で報告されており、がん種非特異的であることが特徴です
- 報告された固形癌全体でTMB-High(TMB≧10mut/Mb)を有する割合は13.3%と報告されています。
■固形癌におけるTMB-High(TMB≧10mut/Mb)の割合(海外データ)
【対象・方法】FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル(F1CDx)によりTMBを測定した104,814例の固形癌について、TMB-High(TMB≧10mut/Mb)の割合が高かった上位30位のがん種(少なくとも100例以上の症例を対象とした)を示した。
Chan TA et al. Ann Oncol 2019; 30: 44-56
著者にMSD社から講演料などを受領している者が含まれる
TMB-High固形癌に対するキイトルーダ®の作用機序(イメージ図)
がん免疫サイクル
Chen DS et al. Immunity 2013; 39: 1-10
TMB-High固形癌
TMB-High固形癌では、体細胞変異の蓄積により免疫応答を誘導する腫瘍特異抗原(ネオアンチゲン)が多く産生されるため、T細胞に認識されやすくなると考えられています。
Efremova M et al. Front Immunol 2017; 8: 1679
Chan TA et al. Ann Oncol 2019; 30:44-56
著者にMSD社から講演料などを受領している者が含まれる
がん細胞の免疫監視機構からの回避
がん細胞はT細胞による認識から逃れるため、がん微小環境にPD-L1/PD-L2を発現させ、活性化T細胞上のPD-1と結合することによりT細胞を抑制し、免疫監視機構から逃れることができます。
Pardoll DM. Nat Rev Cancer 2012; 12: 252-264
キイトルーダ®の作用(がん微小環境)
キイトルーダ®はPD-1に対するヒト化モノクローナル抗体であり、不活性化T細胞上のPD-1と結合することにより、がん細胞や免疫細胞上のPD-L1及びPD-L2との結合を阻害することで、T細胞を再活性化すると考えられています。その結果、TMB-High固形癌において抗腫瘍効果が発揮されると考えられています。
藤岡優樹 他. Current Therapy 2017; 35: 172-179
Postow MA et al. J Clin Oncol 2015; 33: 1974-1982
Jedd D. Wolchokは、MSD社より研究助成金、顧問料などを受領している