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1分で読める睡眠豆知識 ~睡眠とスポーツパフォーマンス~

1分で読める睡眠豆知識 ~睡眠とスポーツパフォーマンス~

近年、スポーツ医学のなかで睡眠の重要性が認識され、コンディショニングの一環として、睡眠に配慮するアスリートが増えています。しかし、どのような睡眠がアスリートのパフォーマンスに影響を及ぼすかについては必ずしも明確にはなっていません。そこで、睡眠の延長がスポーツパフォーマンスに好影響を与えるという研究を紹介します。

走るスピードやシュート成功率など運動能力が向上

睡眠は、心身の回復のほか、意欲、集中力、判断力、記憶力などを保つために大切な役目を果たしているとされ、アスリートにとって睡眠はパフォーマンスに大きな影響を与える要素といえます。睡眠不足が身体的パフォーマンスに悪影響を与えたとする研究は数多くありますが、その逆の研究はほとんどありませんでした。

そこで、スタンフォード大学の研究グループは、睡眠の延長がアスリートのパフォーマンスにどのような影響を与えるかを調査しました1)。対象は、スタンフォード大学の男子バスケットボール部員11人。同部員に毎日10時間以上の睡眠を約1カ月半にわたって毎日取ってもらい、その間のバスケットボールに関する運動能力の変化を記録しました。また、日中の眠気のレベルや気分状態なども合わせて観察しました。

その結果、毎日10時間以上眠ることで、走るスピードやシュート成功率など運動能力が向上し、練習中や試合中のやる気が高まることが明らかになりました。282フィートダッシュでは、普段の睡眠時には16.2秒であったのが、睡眠延長時には15.5秒に縮まりました(p<0.001)。フリースロー成功回数は10回中、7.9回から8.8回、スリーポイントシュート成功回数は15回中、10.2回から11.6回に増えました(いずれもp<0.001)。また、練習中や試合中のやる気(主観的評価)もより高まりました(p<0.001)()。とりわけ、282フィートダッシュのスピードの変化を経時的に観察すると、観察期間の1カ月半中に徐々に速度がアップしていました(1)

表:毎日10時間以上の睡眠を1.5ヵ月取った後の運動パフォーマンスの変化

【目的】睡眠の延長がアスリートのパフォーマンスに与える影響を検討
【対象】スタンフォード大男子パスケットボール部員11人
【方法】毎日10時間以上の睡眠を約1カ月半してもらい、バスケットボールに関する運動能力の変化や日中の眠気や気分の状態を観察評価

図:普段の睡眠と比較した睡眠延長後の282フィートダッシュの変化(海外データ)

【目的】睡眠の延長がアスリートのパフォーマンスに与える影響を検討
【対象】スタンフォード大男子パスケットボール部員11人
【方法】毎日10時間以上の睡眠を約1カ月半してもらい、バスケットボールに関する運動能力の変化や日中の眠気や気分の状態を観察評価

日中の眠気や気分の改善も

普段の睡眠から睡眠延長後までの眠気の評価ESS(Epworth sleepiness scale)と気分の評価POMS(Profile of Mood States)で測定すると、日中の眠気と気分の両方で改善が認められました(p<0.001)。

これらのことから、習慣的な睡眠を超えた長時間の睡眠は、運動能力、日中の眠気、気分の改善に好影響を与えることがわかりました。

  1. Mah C, et al. SLEEP 2011; 34(7); 943-50.

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