1分で読める睡眠豆知識 ~子どもが悲鳴を上げても起こしてはいけない~
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夜中に子供が突然叫び声をあげ、手足をばたつかせている―まるで悪い夢を見ているように見えますが、これは夜驚症(やきょうしょう)かもしれません。夜驚症は睡眠時驚愕症(きょうがくしょう)とも呼ばれる睡眠随伴症の一種で、ノンレム睡眠中に起こる覚醒障害です。
エピソードは小児期に多く、成人では少ない
夜驚症の最初のエピソードは小児期に出現します。小児期に多く見られるのに対し成人では少なく、悪夢にうなされている状態とは異なっています。診断基準は表の通りです1)。夜間睡眠ではノンレム睡眠の多い最初の1/3の時間帯に発現しやすく、遺伝性が高いことでも知られています1)。子供の有病率は1~6.5%と推定されていますが2)、1997世帯の2歳半の子供を6歳まで追跡した研究では、約40%の子供が夜驚症を経験していることが明らかになっています3)。また近年の研究では夜驚症の最も多く起きる年齢は1.5歳であり、この年齢の子供の35%が夜驚症を発症するという報告もあります4)。
![夜驚症(睡眠時驚愕症)の診断基準(ICS-3)](https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2022/01/mamechishiki-058-01.jpg)
![夜驚症の特徴ほか](https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2022/01/mamechishiki-058-02.jpg)
症状としては睡眠中に突然叫んだり暴れたり、あるいは蹴ったりするなどのパニックや恐怖のしぐさが見られ、通常、心拍数や呼吸の上昇、皮膚の紅潮、発汗、瞳孔の拡大、筋肉の緊張などを伴います。子供は目を開けて、部屋の中の誰かや何かを強く恐れているように見えることがありますが、通常、子供を起こそうとしたり、落ち着かせようとする人には反応しません。
起こそうとせず見守るのが正解
夜驚症で悲鳴を上げている子供を見たら、周りの大人はすぐにでも目を覚ましてやりたいと思うでしょう。ですが、子供を起こそうとしないでください。覚醒させようとすると恐怖が長引いたり、身体的な反応を引き起こして怪我につながる可能性があります。ほとんどの夜驚症は10分程度で終わりますが、中には30分から40分ほど続く子供もいます。エピソードが終わると、子供たちは再び深い眠りにつき、多くの場合、翌朝には夜驚症の記憶は残っていません。
夜驚症は成長するに従い自然と消えていき、特に治療を必要としない場合が多いですが、睡眠不足や不規則な睡眠習慣、ストレス、閉塞性睡眠時無呼吸、アルコール、カフェイン、発熱疾患などが夜驚症の誘因となると考えられています1)。繰り返して心配な場合には、規則正しい睡眠習慣をつけるよう心がけ、閉塞性睡眠時無呼吸がないかなど検査しておくと安心です。
- 加藤久美 臨床神経生理学 2020; 48: 45-49.
- Leung AKC, et al. Curr Pediatr Rev 2020; 16: 176–182.
- Petit D, et al. Pediatrics 2007; 119: e1016-25.
- Moreno MA, et al. JAMA Pediatr 2015; 169: 704.
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