共有する

irAE Medical Education ⽪膚障害

「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。

Medical Education

irAE Medical Education
⽪膚障害

⽇時:2024年5⽉17⽇(⾦)18:30〜19:30
インターネット講演会
主催 MSD株式会社
  オンコロジーメディカルアフェアーズ

Medical Education irAE Medical Education ⽪膚障害

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連有害事象(irAE)はさまざまな臓器で起こるが、⽪膚障害については、多様な症状がみられ、専⾨以外の医師が判断に迷う場⾯も少なくない。今回は⽪膚腫瘍の専⾨家である内 博史先⽣に、irAE⽪膚障害への適切な対応と⽪膚障害の鑑別、⽪膚科専⾨医へのコンサルトタイミングについてご講演いただいた。

<講演>
内 博史 先⽣
独⽴⾏政法⼈国⽴病院機構 九州がんセンター ⽪膚腫瘍科 医⻑

薬剤による⽪膚障害


 薬剤による⽪膚障害である薬疹では、薬剤が抗原あるいはハプテンとして作⽤して⽣じるアレルギー性の発疹がみられます。左右対称に⽣じる丘疹あるいは紅斑、また、特定の薬剤が原因となり投与のたびに同⼀部位に発疹が⽣じる固定薬疹などが、⼀般的な薬疹として知られています。重篤な⽪膚障害として中毒性表⽪壊死症(TEN)が挙げられます。TEN は全⾝の広範囲に紅斑や⽔疱・びらんが出現し、命に関わることもあります。

抗癌剤による⽪膚障害


 抗癌剤による⽪膚障害は、上述のようなアレルギー性だけでなく、⾮アレルギー性の⽪膚障害や、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)により起こるものがあります(図1)。
 ⾮アレルギー性の典型的な⽪膚障害として、殺細胞性抗癌薬の直接的な作⽤によるものと、分⼦標的治療薬によるものが知られています(図1)。⼿⾜症候群は、掌蹠全体に発⾚がみられ、⽪膚が菲薄化して強い痛みが出る⽪膚障害です。殺細胞性抗癌薬が⼿⾜の⽪膚の細胞分裂を抑制することによって起こると考えられており、抗癌剤治療の継続が難しくなる場合もあります。
 また、分⼦標的治療薬による⽪膚障害は、薬剤の標的分⼦が⽪膚にも発現しているために起こる⽪膚障害で、特徴的な⽪疹が出現します。

図1 抗癌剤による⽪膚障害

抗癌剤による⽪膚障害

提供:内 博史 先⽣

irAEの発症機序


 ICIのターゲットである免疫チェックポイント分⼦は、本来は⾃⼰免疫反応を抑制する働きをしています。そのため、ICIが免疫チェックポイント分⼦を阻害すると⾃⼰免疫に関わるT細胞を活性化させ、抗がん作⽤だけでなく免疫関連有害事象(irAE)を起こすことが知られています。
 irAEの発症機序は、上に挙げた⾃⼰免疫性T細胞の活性化以外にも、同じく⾃⼰免疫機構に関わるB細胞による⾃⼰抗体の産⽣が⽰されています。また、腫瘍抗原と交差反応を⽰す抗原が⽪膚に発現して起こる交差反応性、免疫細胞によるサイトカインやケモカインの産⽣、標的以外の部位で薬剤の作⽤が起こるオフターゲット効果、さらに、マイクロバイオームの影響による炎症など、さまざまな機序が考えられています1)

irAE⽪膚障害の頻度


 ⽪膚は⾯積の⼤きい臓器であるため、⽪膚障害の頻度はirAEの中でも⽐較的⾼く、重度の⽪膚障害が起こることもあります。
 irAE⽪膚障害の頻度は、悪性⿊⾊腫患者を対象とした海外第Ⅲ相試験である、KEYNOTE-006試験で報告されており、キイトルーダ®投与群における発疹の発現率は約13〜14%で、そう痒症は約14%、尋常性⽩斑は約9〜11%でした2)
*国内承認外の⽤法及び⽤量の投与法が含まれています。
 また、悪性⿊⾊腫に対し、抗PD-1抗体+抗CTLA-4抗体(ニボルマブ+イピリムマブ)併⽤、抗PD-1抗体単剤、抗CTLA-4抗体単剤を⽐較した海外第Ⅲ相試験においても、発疹、そう痒症、尋常性⽩斑や、斑状丘疹状⽪疹などの有害事象発現が報告されています。irAE⽪膚障害の発現率は、ICI単剤群よりも2剤併⽤群で⾼く、重篤な⽪膚障害としては発疹が3%、そう痒症と斑状丘疹状⽪疹が2%と報告されました3)。軽度なirAE⽪膚障害では、外⽤薬などで対応してICI投与の継続を検討する場合がありますが、重症なirAE⽪膚障害ではICI投与を中⽌せざるを得ない場合もあります。

キイトルーダ®の承認された⽤法及び⽤量
通常、成⼈には、ペムブロリズマブ(遺伝⼦組換え)として、1回200mgを3週間間隔
⼜は1回400mgを6週間間隔で30分間かけて点滴静注する。

irAE⽪膚障害の例


 ICIによる⽪膚障害について、発疹のさまざまな症例を紹介します。

▶︎ 斑状丘疹状⽪疹
 ICIによる典型的な⽪膚障害の⼀つで、通常の薬疹の症状でみられるような、⾚い⽪疹あるいは斑が出現します。⽐較的軽症で、ステロイドの外⽤薬や少量の内服によりコントロールできればICI治療の継続が可能です。
 病理組織学的には、真⽪組織への密なリンパ球浸潤が認められます(図2)。免疫染⾊ではCD8陽性の細胞傷害性T細胞(CTL)を認め、真⽪組織に浸潤したCTLが何らかの抗原に反応し、⽪疹を呈すると考えられています。臨床では、⽪疹の⾚みという⾒た⽬よりも、組織での症状が強い印象を受けることがあります。
 重症例では紅⽪症の症状が出現し、ステロイド全⾝投与を要する場合があります。⽶国のNCCNガイドラインでは重症度別にirAEの治療⽅法が記載されており、重症例ではICIを中断し、ステロイド全⾝投与および⽪膚科へのコンサルトを⾏うことなどが記載されています4)
 なお国内ではがん免疫療法ガイドライン第3版が⽤いられており、NCCNガイドラインとほぼ同様の対応となっています5)。本ガイドラインでは、重症度は体表⾯積に占める⽔疱・びらん以外の⽪疹の割合で分類されており、Grade 1 は⽪疹(⽔疱・びらん以外の)が体表⾯積の10%未満で、ICIの投与は継続が可能です。Grade 2 は⽪疹が体表⾯積の10〜30%未満で、同じくICI投与継続が可能です。Grade 3 は⽪疹(⽔疱・びらん以外の)が体表⾯積の30%以上です。ICIは投与を休⽌し、治療前またはGrade 1 以下まで回復した場合は、再投与を検討できます。そして、⽪疹(⽔疱・びらん以外の)が体表⾯積の30%以上で、⽔疱・びらんが10%未満認められ、発熱と粘膜疹を伴う場合はGrade 4 となり、ICIは投与休⽌し、⼊院の上、厳重管理と治療を⾏います。

図2 ICI による⽪膚障害:斑状丘疹状⽪疹

ICI による⽪膚障害:斑状丘疹状⽪疹

⽪疹組織のリンパ球(右上)とCD8陽性T細胞(右下)の浸潤

提供:内 博史 先⽣

▶︎ 瘙痒
 かゆみは患者のQOLを低下させるため、コントロールが重要となる⽪膚障害です。かゆみの発⽣機序は、アトピー性⽪膚炎の分野で研究が進んでおり、いくつかの機序が明らかになっています(図36)。代表的なものは、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンといった古典的な原因物質(ケミカルメディエーター)が放出されて、かゆみが起こる機序があります。また、最近ではTh2サイトカインとしてIL-31、IL-4、IL-13などの関与が指摘されており、コントロールの難しいかゆみを起こします。最近はアトピー性⽪膚炎の治療において、Th2サイトカインに対する抗体製剤が開発されています。
 先述のNCCNガイドラインでは、ICIによるかゆみは⼀般的には抗ヒスタミン薬内服と保湿でコントロールし、加えて重症度に応じた治療を⾏うと記載されています。また、ICI継続・中⽌の検討も重要です。多くの場合、かゆみにはT細胞が関与しておりステロイドが⽤いられますが、中等症以上の場合は光線療法を検討し、重症例でTh2細胞が関与している場合は抗IL-4受容体抗体(デュピクセントなど)も検討されます4)
 同ガイドラインには、かゆみが強い場合は⽪膚科にコンサルトするということも記載されています4)。⼀般的には、かゆみだけでは⽪疹は起こらないのですが、瘙痒により掻破を続けていると湿疹ができてしまうため、⽪膚科へのコンサルトは⼤変重要です。なお、掻破による湿疹は⽪膚を削り取るために点状に出⾎を認めますが、斑状丘疹状⽪疹では通常はこのような表⽪の変化は起きないので、その点が鑑別のポイントとなります。
 さらに重症化して結節性痒疹(図4)になると、夜も眠れないほどのかゆみが出る場合があるため、⽪膚科にコンサルトする必要があります。治療はステロイドの外⽤に加えて全⾝投与、また光線療法や抗IL-4受容体抗体(デュピクセントなど)も検討します。

図3 かゆみの発⽣機序

かゆみの発⽣機序

アトピー性⽪膚炎診療ガイドライン2021
⽇本⽪膚科学会,⽇本アレルギー学会編 ⽇⽪会誌 2021; 131:2691-2777

図4 ICI による⽪膚障害:瘙痒・掻破による結節性痒疹

ICI による⽪膚障害:瘙痒・掻破による結節性痒疹

提供:内 博史 先⽣

重症薬疹


 ICI治療を中⽌せざるを得ない、時には⽣命に関わるような重症型の⽪疹について紹介します。irAE⽪膚障害は発症機序や症状が多彩であり、⼀⾔で説明することは困難ですが、「おかしいな」と思ったらすぐに⽪膚科へコンサルトしていただければと考えています。

▶︎ スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)
 粘膜の障害(粘膜疹)が起き、かつ発熱あるいは倦怠感といった全⾝症状があらわれ、致命的となることもあります。⼀般的には感染症や薬剤が原因とされますが、ICIにより発症することがあります。
 SJSでは、粘膜である結膜、尿道、気道などが強く障害されます。治療が遅れるとそれぞれ⾓膜障害、排尿障害、呼吸障害などに⾄る場合があり、治療しても後遺症が残るなど、QOLが⾮常に低下します。
 NCCNガイドラインには、SJS発現の際にはICIを中⽌し、その後も再開しないこと、⽪膚科のほか眼科や泌尿器科へもコンサルトすると記載されています4)。治療はステロイドの静注または内服による⼤量投与で、ためらわず⾏うことが⼤切です。コントロール困難な場合は免疫グロブリン静注療法や⾎漿交換も検討します。
 当院では、嚥下痛のため⽿⿐科で検査したところ、咽頭・喉頭まで広範にびらんを認めた重症例を経験しています(図5)。このように、粘膜疹がみられた患者では、SJSを念頭において、気道だけでなく眼、尿道、肛⾨など全⾝の粘膜をチェックすることが⾮常に重要です。

図5 ICI による⽪膚障害:スティーブンス・ジョンソン症候群

 ICI による⽪膚障害:スティーブンス・ジョンソン症候群

提供:内 博史 先⽣

▶︎ 多形紅斑
 図6に⽰すような「標的様」の紅斑を多形紅斑といい、紅斑の中⼼に暗い紫⾊の部分があり、周辺は薄いピンク⾊、さらに周りに少し濃いピンク⾊と、三重、もしくは⼆重になっていることが特徴です。表⽪と真⽪の境界部分が強く障害されている病態を反映した⽪疹と考えられており、SJSやTENに進展するなど重症化するリスクがあるため、注意が必要です。
 多形紅斑の症状がある患者は、唇にもびらんが⽣じる場合があります。受診時にはマスクをしている患者も多いと思いますが、診察時に重症化リスクのある⽪疹を⾒つけた場合は、マスクを取っていただいて唇のびらんや⼝腔粘膜の病変の有無を必ず確認しましょう。SJSと同様に、眼や尿道の症状も確認します。

図6 ICI による⽪膚障害:重症化のリスクがある⽪疹・多形紅斑

ICI による⽪膚障害:重症化のリスクがある⽪疹・多形紅斑

提供:内 博史 先⽣

▶︎ 急性全⾝性発疹性膿疱症(AGEP)
 AGEPは、⽑包と⼀致しない⼩さい⽩⾊の膿疱が多発することが特徴的なirAE⽪膚障害です。こちらも重症化リスクがありますが、ステロイドの反応性は⽐較的良好であることが知られています。

▶︎ ⽩斑
 ⽩斑は、メラニン⾊素を産⽣する⽪膚の細胞であるメラノサイトが⾃⼰反応性T細胞により攻撃され、メラニン⾊素が枯渇して起こる⽪膚障害です。悪性⿊⾊腫はメラノサイトががん化して⽣じることがわかっており、悪性⿊⾊腫とメラノサイトは共通の抗原を持っているため、メラノサイトも⾃⼰反応性T細胞による攻撃を受けてしまうという機序が⽰されています。
 患者にとっては⾒た⽬に影響する⽪膚障害のため気にされる場合もありますが、医療者側からみると、⽩斑は腫瘍に対する攻撃がなされたことを⽰唆しているともいえます。できてしまった⽩斑を改善することは難しいのですが、患者には、ICIの悪性⿊⾊腫への効果が期待できる徴候でもある、とお伝えしています。
 実際に、⽩斑を認めた悪性⿊⾊腫患者では、⽩斑なしの患者に⽐べてOSが良好であったことが、後ろ向き試験から報告されています(未到達vs18.0ヵ⽉、ハザード⽐ 0.20(95%信頼区間 0.12-0.33、p<0.0001、名⽬上のp値、log-rank test))7)

▶︎ その他
・扁平苔癬
 苔癬型薬疹ともよばれ、ICI投与患者のおよそ10⼈に1⼈の頻度で出現します。鱗屑を伴う紫紅⾊斑(触知不能な病変)または局⾯(触知可能な病変)が特徴で、⾃⼰反応性T細胞が表⽪ケラチノサイトを障害することで起こると考えられています(図7)。
 NCCNガイドラインでは、軽症であればステロイドの外⽤でコントロール可能、重症例は⽪膚科にコンサルトし、ステロイド内服が必要な場合もあると記載されています4)。ステロイドにより軽快する場合もありますが、扁平苔癬は⽪膚を強く障害するため、⾊素沈着が⻑く残る患者もいます。

図7 ICI による⽪膚障害:扁平苔癬(苔癬型薬疹)

ICI による⽪膚障害:扁平苔癬(苔癬型薬疹)

提供:内 博史 先⽣

・⾃⼰免疫性⽔疱症
 いくつか種類がありますが、例えば⽔疱性類天疱瘡は、病理組織学的にみると表⽪と真⽪の境界部(基底膜)に17型コラーゲンに対するIgG⾃⼰抗体が沈着し、⽔疱ができて表⽪がはがれる病態です。
 SJSでもびらんが起こりますが、SJSの発症機序にはT細胞が関わっているのに対し、⾃⼰免疫性⽔疱症の機序にはB細胞による(⾃⼰)抗体の産⽣が関わっており、病態が異なります。ただし外⾒から判断するのは⾮常に難しいため、びらん、あるいは⽔疱がある場合は、ためらわず⽪膚科へのコンサルトをお勧めしています。
 NCCNガイドラインでも、⽔疱症の鑑別のため、すみやかに⽪膚科にコンサルトする旨が記載されています4)。ICIは中等症以上で中断し、軽症でも中断を検討します。必要に応じてステロイド全⾝投与を⾏い、重症例では免疫グロブリン静注療法や⾎漿交換など、重症薬疹と同様の対応が求められる場合があります。

・尋常性乾癬
 ヘルパーT細胞の⼀種である、Th17細胞を介した炎症反応が発症機序と考えられています。厚い鱗屑を伴う紅⾊局⾯を呈し、扁平苔癬と類似した臨床症状を⽰しますが、病態は異なるものと捉えられています。

・IgA⾎管炎
 アナフィラクトイド紫斑ともよばれ、微⼩⾎管にIgAが沈着し、末梢⾎管が障害されます。触診できる盛り上がった紫斑(palpable purpura)が特徴となっています。

・RS3PE症候群
 膠原病の⼀種と考えられる⽪膚障害で、⾎清反応陰性の、圧痕を伴う浮腫(pitting edema)を伴う滑膜炎が左右対称性に出現します。ICIによるRS3PE症候群が引き起こされた悪性⿊⾊腫患者について、私たちのグループが症例報告を⾏っています8)。この患者はステロイド反応性が⽐較的良好で、早期に改善しました。

まとめ


 ICIによる⽪膚障害は機序や症状が⾮常に多彩です。そのため、それぞれの重症度に応じた適切な治療を⾏うこと、重症化しやすい⽪疹を⾒逃さないことの2点が重要なポイントです。
 粘膜疹、⽔疱・びらんの症状は特に、重症化につながる可能性があることから、専⾨医が早急に対応する必要があります。迷わず⽪膚科へコンサルトしていただきたいと考えています。

図8 まとめ

まとめ

提供:内 博史 先⽣

Q&A


Q1 irAE⽪膚障害で内服ステロイドを併⽤する場合、ICIが継続されている間はステロイドも継続内服したほうがよいでしょうか。
A1 ⽪膚の障害の強さによりますが、ある程度コントロールできている場合は、テーパリングを経てステロイド投与を中⽌することも可能です。
テーパリング中に再燃しても、例えばプレドニゾロン換算で5〜10mgの少量投与であれば、多くの場合はICI治療への⽀障はなく継続できると考えています9)
なお、⽪疹が⾮常に強い場合は、まずはICIを中断してステロイド治療を⾏い、irAEの症状がGrade 1 程度になったところでICI再開を検討することもあり、症例によってさまざまな対応が考えられます。

Q2 重症例で、ステロイド内服薬の減量はどれくらいの速さで調整していますか。
A2 ICIの⽪膚障害では、ステロイドを急いで減量するとぶり返すことがあるため、⽪膚科の⽴場からすると、できるだけゆっくり減らすことをお勧めしています。
例えば、プレドニゾロン換算1mg/kg/⽇として60mg/⽇で開始した場合、症状が落ち着いたら1週間に10mg/⽇ずつ減量します。そして20mg/⽇程度になったところで減量のペースを落とし、1〜2週毎に5mgずつ減らしていく、といった⽅法などで、⽐較的再燃のリスクを抑えてテーパリングできる可能性があると思います。
ステロイド投与量を最終的には0にすることが望ましいですが、先に述べたように、少量の内服を継続しながらICI治療の再開を検討する場合もあります。

Q3 術前補助化学療法としてICIを使うことも増えてきましたが、⼿術の延期が必要となるような、特に注意すべき⽪疹はありますか。
A3 粘膜疹が出るような重症薬疹は、その治療をいったん優先する必要があります。講演でも述べましたが、「粘膜疹」と「⽔疱・びらん」は特に、早急な対応が求められますので、これらを発⾒したら、迷わず⽪膚科にコンサルトしていただきたいです。

参考⽂献
1) Esfahani K et al. Nat Rev Clin Oncol 2020; 17: 504-515
2) Robert C et al. N Engl J Med 2015; 372: 2521-2532
3) Wolchok JD et al. N Engl J Med 2017; 377: 1345-1356
4) NCCN Guidelines® Version 1. 2024 Management of Immune Checkpoint Inhibitor-Related Toxicities
5) ⽇本臨床腫瘍学会編. がん免疫療法ガイドライン 第3版. ⾦原出版,2023
6) ⽇本⽪膚科学会, ⽇本アレルギー学会編. アトピー性⽪膚炎診療ガイドライン2021. ⽇⽪会誌 2021; 131: 2691-2777
7) Dousset L et al. JAAD Int 2021; 5: 112-120
8) Wada N et al. J Dermatol 2017; 44: e196-e197
9) Horvat TZ et al. J Clin Oncol 2015; 33: 3193-3198

論⽂2)はMSD社の資⾦提供により⾏われ、著者にはMSD社の社員を含みます。
論⽂2、3、7)の著者にはMSD社より謝礼、研究費等を受領した者を含みます。
論⽂2、3)の著者にはMSD社よりコンサルティング料を受領した者やアドバイザリーボードのメンバーを含みます。