共有する

診療ガイドライン紹介 子宮頸がん

診療ガイドライン紹介 子宮頸がん

日経メディカルOnline『疾患解説 for GP』より転載
監修・青木大輔(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室教授)

子宮体癌の疾患と臨床

子宮体癌には前述の通り、子宮内膜由来する子宮内膜(腺)癌が全体の70%を占める。ほかに子宮内膜と癌線維芽細胞あるいは肉腫が混在する「子宮体部癌肉腫」、正常の子宮内膜を構成する間質細胞に類似した「子宮内膜間質肉腫」がある。また子宮筋層から発生する癌は「子宮平滑筋肉腫」と呼ばれる両肉腫の発生はまれである。

 子宮内膜癌の発症には女性ホルモンが深く関与することが明らかになっている。閉経が近づくと、排卵が起きず、女性ホルモン(エストロゲン)が持続的に卵巣から分泌される。一方、排卵後に分泌される、黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されない状態が続くために子宮内膜細胞は次第に増殖していくことになる(子宮内膜増殖症)。この状態が長期に続くと子宮内膜に癌細胞が出現し、それが持続的に分泌される女性ホルモンによりさらに増殖し、子宮内膜(腺)癌が発生すると考えられる。

 肥満した女性は副腎で分泌される性ホルモンが脂肪組織で女性ホルモンに転換されやすくなり、閉経前後でなくても子宮内膜(腺)癌が発生する。

 ホルモンの影響を受けずに発生すると考えられる子宮体癌(Ⅱ型とも呼ばれる)は子宮内膜(腺)癌とは異なり、前癌病変を伴わずに突然、子宮内膜の基底層の未分化な細胞が癌化すると考えられているが、その発生の仕組みはよくわかっていない。

子宮頸癌の年間新規罹患数が約9800人、子宮体癌が1万800人、どの部位かの情報がない子宮癌患者が約900人と推定される(地域癌登録全国推計値2008年)。死亡は子宮頸癌が約2700人、子宮体癌が約2700人、どの部位かの情報がない子宮癌が約1300人となっている8人口動態統計2011年版)。以前は、子宮頸癌(浸潤癌)が子宮体癌よりも多かったが、近年はほぼ同数となった。

 子宮体癌は婦人科腫瘍のなかでは乳癌に次いで多い癌で、その患者数は過去20年間で4倍に達したといわれる。その背景には妊娠回数の減少、食生活の欧米化、ホルモンバランスに乱れが関係しているとみられる。

子宮体癌の代表的な症状は閉経後の不正性器出血である。

 子宮体癌が子宮頸管に侵入し、子宮口を閉鎖することがある。このようなケースでは貯留した分泌物や出血によって2次的感染が起こり、発熱や周期的な子宮収縮による痛みの原因になるがまれである。

 進行するとリンパ節転移や腹膜播種、癌性腹膜炎を引き起こす。

子宮体癌の検査は子宮頸癌と共通したものが多い。子宮頸癌と異なる検査には以下のようなものがある。

① 子宮内膜細胞診、子宮内膜組織診

細胞診は専用の器具を子宮腔内に挿入して細胞を採取する。子宮内膜組織診は子宮内膜の一部を生検する場合と、必要に応じて麻酔下に全面掻爬を行い採取する場合がある。

② 経腟超音波検査(TVエコー検査)

解像力の向上とともに、必須な検査項目となっている。

子宮内膜の厚さを測定して、子宮体癌の可能性を推定し、子宮頸部へ浸潤する癌を描出あるいは体部筋層への浸潤の程度を描出し、癌の広がりをみることができる。

③ MRI検査

 癌の大きさと子宮体部筋層浸潤の程度により、後腹膜リンパ節郭清を実施するか否か、その郭清範囲を拡大するか否かの判断に重要である。

子宮体癌の初回治療の基本は手術であるが、病変の広がりや組織型によっては化学療法や放射線治療を術後に行うことがある。患者が若く、妊孕性の温存を希望する場合には一部の条件を満たした場合に限って子宮を摘出せずに、高用量の黄体ホルモン療法を行うことがある。

 日本婦人科腫瘍学会『子宮体癌治療ガイドライン2013年版』によると、臨床ステージⅠ~Ⅱ期で子宮体部に限局する場合は、腹式単純子宮全摘出術が、臨床的に明らかな子宮頸部間質浸潤の癌では、広汎子宮全摘術もしくは準広汎子宮全摘術が推奨される。単純子宮全摘手術には腹式、腟式あるいは腹腔鏡下に実施される。

 広汎子宮全摘術は、子宮および子宮傍組織、腟壁および腟傍組織の一部を摘出し、骨盤内所属リンパ節を郭清する術式である。準広汎子宮全摘術は、広汎子宮全摘術と単純子宮全摘出術の中間に位置する術式で、通常リンパ節郭清が行われる。子宮摘出後に子宮体癌と判明した症例には、経過観察、化学療法、放射線治療が推奨される。術前にⅢ期・Ⅳ期と考えられる症例には、腹式単純全摘出術の手術、化学療法、放射線治療が推奨される。

 術後補助療法については低~高の3段階の再発リスクを評価したうえで治療法を選択する。低リスク群には経過観察が、中等度リスク群には化学療法、放射線治療が推奨される。一方、高リスク群には化学療法、放射線治療、ホルモン療法が推奨される。

 高用量黄体ホルモン療法は、通常40歳未満で前癌病変である子宮内膜異型増殖症や子宮体癌、ⅠA期GIと診断された患者が妊孕性を希望した場合に限って行われる。酢酸メドロキシプロゲステロンを使う高用量黄体ホルモン療法では患者の3/4以上で病変が消失する。しかしながら再発リスクも高く、病変消失直後に排卵を誘発し月経を清順にすることによって妊娠努力を開始する。もし未婚であるならば妊娠可能になるまで低用量ピルを用いて確実に1カ月周期の月経を起こす必要がある。

関連コンテンツ

ワクチンコンテンツ一覧